vol.7 純当座比率

 財務分析の項目の一つに流動比率という項目があります。
これは、貸借対照表の資産の中にある流動資産と負債の中にある流動負債とを比較して、資金繰りが上手に回転しているのかをチェックする為の指標です。

 ちなみに、貸借対照表の中にある「流動」と「固定」における区分の基準は、一年以内(ワンイヤールールとも言います)で、資産であればキャッシュに換金されるかどうか、負債であれば一年以内に支払われるものかどうかという見方をします。

 ですので、一年以内にキャッシュに換金される流動資産と一年以内に支払われる(キャッシュが出て行く)流動負債とのバランスは、流動資産>流動負債となることが望ましいといえます。

 一般的には、これらを流動比率(流動資産÷流動負債×100)でチェックします。業種にもよりますが、150%~200%あれば、資金繰りが順調にまわっていると言われています。

 ところが、その一方で流動比率が高いにも関わらず、資金繰りに苦慮している会社もたくさんあります。

 というのは、流動資産に隠されている勘定科目に問題があります。
流動資産では、(1)現預金、(2)売上債権、(3)有価証券、(4)棚卸資産、(5)その他流動資産に分類されています。

 中小企業では(3)の有価証券を多額に保有することは少ないので、ここでは(2)(4)(5)を中心に話を進めます。

 まず、(2)の売上債権ですが、これには予定サイト通り回収できている正常債権と、回収が遅れている延滞債権、そして回収が不可能な破産債権に分類する事ができます。
 この売上債権で、仮に延滞債権や破産債権が多額に含まれていたとすると、実際は流動資産に該当しない債権が含まれていることになります。

 次に(4)の棚卸資産ですが、不良在庫が多額に存在していたり、在庫の滞留期間が非常に長い場合は、流動資産に該当しない債権が含まれていることになります。

 そして(5)のその他流動資産ですが、これには、立替金、仮払金、未収入金短期貸付金といった科目が含まれています。
 これらの科目の中には、前期以前の決算書から引き続き残高が残ったままになっているケースがあります。

 このように、(2)(4)(5)の中にもワンイヤールールに適しない債権が含まれていることから、単純に流動比率をチェックして、150%を超える指標だからといって、安心する事はできません。

 これらの事態に対応すべく、当座比率という指標も存在しています。 これは、当座資産(現預金と売上債権、有価証券)と流動負債のバランスを見ることで、資金繰り状況をチェックする為のものです。
 当座比率(当座資産÷流動負債×100)では、棚卸資産やその他流動資産を除いて評価を行なう為、ある程度の信憑性は高まりますが、以下の問題が発生します。

 (1)売上債権の中に、延滞債権や破産債権が含まれている場合
 (2)有価証券が含み損を抱えている場合
 (3)固定負債の中に、ワンイヤールールに適合する支払が存在している場合
  (長期借入金の場合、一年以内に返済する借入元金返済部分が、流動負債の中に含まれていない場合)

 これらのケースが該当する場合、当座比率といっても、正確に自社の資金繰り状況を評価する事ができません。

 そこで、みなさんに実践して頂きたいのが、この純当座比率という考え方です。
 これは、私自身が独自に考えた分析指標ですので、一般的な財務分析指標には掲載されていません。
 この指標をチェックするにあたっては、さきほど記載した当座比率の問題点を考慮して検証します。

   (1)純当座資産...現預金、売上債権のうち正常債権、有価証券(時価)
  (2)純流動負債...流動負債、固定負債のうちワンイヤールールに適合する債務

 
純当座資産÷純流動負債×100=純当座比率


 この純当座比率を使った上で、指標が100%を超える状態であれば、資金繰りは順調であるといえますし、その一方で100%を切る状態であれば、財務面で問題が潜んでいるといえます。

 決算書(貸借対照表)をチェックする際は、是非この純当座比率を使って、財務状況を評価してみましょう。