vol.13 経理業務の工数管理

 工数管理という言葉は、製造業で主に使われ、製造工程を数値管理する方法ですが、間接業務である経理業務にも、この手法を当てはめることで合理化を図る事ができます。

 一般的には、総務・経理・財務という分野は、「聖域」としてなかなか手をつけられる事がなく、総務・経理担当者の能力に依存しているケースが多くあります。

 ですが、これでは、付加価値の高い経理業務を実践することはできません。

 そこで、オススメしたいのが、経理業務の工数管理です。

(1)経理で実施する業務を全て書き出します。

(2)書き出した業務ごとの所用時間、実施に当たっての人件費以外の必要コストを列挙します。

(3)各業務の難易度を列挙していきます。

(4)各業務の難易度に応じて、業務単価を設定します。

(5)業務単価ごとの標準時間も算出します。

(6)1ヶ月間の経理業務を、業務単価で算出して、経理担当者自身の生産性を算出します。

 このように工数管理を用いる目的は、経理担当者自身が生産性や自身の固定費に対する意識を持ってもらい、付加価値の高い業務を実践してもらうことにあります。

 仮に、付加価値の高い仕事に取り組んでもらうのであれば、難易度の高い、「資金繰り計画の立案」「全社予算の設定」「メインバンクとの資金調達交渉」といったように、業務の中でも難易度の高い財務業務にシフトしてもらうことになりますし、「現状の業務内容で満足」という価値観の経理担当者であれば、実際の業務内容と自身の生産性を見比べて、それに見合った給与体系を用意することになります。

 これまでの時代は、営業マンや製造工程のみが、売上目標や生産性、そして変動費・固定費に対する目標、採算ラインが問われていましたが、これからは、直接部門や間接部門という垣根を超えて、全部門、全社員がそれぞれ付加価値の高い仕事に挑戦していかなければなりません。

 と同時に、低コストで実現可能なものであれば、徹底的に低コストで実現できる方法を模索するのも企業に与えられた使命でもあります。

 経理業務に置き換えてみれば、簡易な業務は、入社暦の浅い社員か、パート・アルバイトを活用して処理することが必要ですし、逆に中堅・ベテラン社員になると、難易度の高い仕事に従事することが求められます。

 皆さんの会社でも、これを機会に、経理部門の工数管理という考え方を、取り入れてみてはいかがでしょうか。

vol.12 財務におけるルール作り

 当社では、お客様に対して「財務」力をアップさせるコンサルティングサービスを展開しています。
 そして、そのサービスを実施するにあたり、お客様自身に決定して頂く事があります。
 それは、自社で「財務」に対するルールを決めるという作業です。
 どういうことかと言いますと、まずは自社の決算書を用意してもらいます。
 そして、貸借対照表・損益計算書に記載されている各勘定科目ごとに、ルールを決めていくというものです。
 例えば、売掛金であれば「30日以内に回収」受取手形であれば、「手形取引はしない」といった具合です。

 固定資産についても重要です。土地・建物や機械・備品に対して「設備投資を積極的に進めていく経営を取る(持つ経営)」を選ぶのか、「事務所・工場・店舗等は賃貸取引を原則として、取得をしない。また、機械・備品についてもリース取引を推奨し、持たない経営を目指す」のかを選択してもらいます。

 その他、在庫や投資項目(どのような投資活動を行なうのか)についても同様です。
自社が目指す経営計画・経営戦略とリンクした内容を各勘定科目ごとに明確にしていくのです。

 買掛金・未払金については支払方法を明確にしたり、借入金については会社としての資金調達のルールを設定しておきます。

 このように各勘定科目のルールを決めた後は、財務分析指標についての目標設定を行ないます。
(1)財務分析指標のゴールを決める...自己資本比率、流動比率、労働分配率といった各種財務分析指標をもとに、そのゴールを決める 
(2)一人当たり目標値の設定...一人当たり売上高、一人当たり粗利益、一人当たり経常利益、一人当たり自己資本といったように、生産性を確認できる目標値を設定する。
(例:一人当たり経常利益が30万円/月になった段階で、新たに採用活動を一人できるといったようなルールを決められます)

 決算書は、過去の数値の合計と捉えられがちです。ですが、活用次第で自社の経営に有効活用できます。

 そして、財務ルールを設定するにあたっては、まず現状分析が必要です。現状とあまりにも乖離した目標値やルールであったとすると、何の為のルールなのか、意味をなしません。

 皆様の会社では、「財務」についてのルールを決めておられますか?  まだ決めておられない方は、一度、自社の試算表・決算書を見て頂いた上で、それぞれの科目に対する方針を明確にしてみてください。

 自社の取るべき財務戦略のヒントは、決算書に潜んでいます。

vol.11 自社に役立つ会計情報

 日頃、皆さんが目にされる試算表や決算書は、『財務会計』という考え方に基づいて作成されています。

 この、財務会計とは、外部の利害関係者(株主、投資家、銀行、リース会社、取引先など)に対して、会社の財務状況を的確に伝える制度のことです。

 当然、外部の利害関係者も、他の会社や、その会社の過去の試算表・決算書との比較を行ないますので、客観的に同一のルールで資料を作成する事が義務付けられています。「法律で決まった資料」といったところでしょうか。

 ですが、中小企業の経営者からすると、非常に見づらいという一面を持っているのも事実です。

 実際には、多くの中小企業経営者が、試算表や決算書の内容を完全には理解できていないのではないでしょうか。

 自分で理解できない資料をもとに、その資料から問題点を探り出して、解決策を考えろ!と言われても、到底無理な話です。

 では、どのようにすればいいのでしょうか?
 そのヒントは『管理会計』に隠されています。

 この管理会計は、財務会計と対照的に「自社の経営に役立つ会計情報を経営者・幹部に提供すること」といわれるものです。

 管理会計にも、原価計算や予算管理といった数多くの計算手法がありますが、これも管理会計の分野において、ほんの一例にしか過ぎません。
 なぜなら目的は、あくまで「経営に役立つ会計情報を提供すること」にあるからです。

 例えば、勘定科目が見づらい(見てもあまり理解できない)という経営者の場合であれば、「旅費交通費」という勘定科目よりも「ガソリン代」「電車代」「タクシー代」「出張旅費」といった科目を使って、どれぐらいの経費がかかっているかをわかりやすくするのも一つの方法です。

 また、店舗別や部門別・個人別の資料が見たいのであれば、個人別の売上・経費一覧表を作成するのもいいでしょう。

 このように、管理会計は財務会計と異なり、非常に幅の広い分野の会計ということができます。

 皆さんの会社でも、試算表や決算書とにらめっこをしているだけでは、なかなか会社の収益状況や財務状況を理解することは難しいと思います。

 これを機会に、自社の経営状況を把握できる資料作りに取り組んでみて下さい。

vol.10 債権・債務・在庫の異常値

 私は、仕事柄、毎日のようにいろんな会社の試算表・決算書に目を通す機会があります。
 その月の試算表・決算書を見ただけでも異常な部分は大体把握できますし、昨年度と同月の試算表と見比べたり、期首との比較、前月との比較をするだけでも、異常値は見やすくなります。
 異常値の中で、代表的な事例が債権・債務・在庫に関する項目です。
 これらの項目は、
    (1)金融機関が見抜く異常値
    (2)会社の経営上見つけておくべき異常値
という2つの見方で捉える事ができます。

 例えば、金融機関の立場に立った場合、債権・債務・在庫の数字が適正値であるかどうか(1.粉飾をしていないかどうか、2.債権の中に既に貸倒に該当するものはないか、3.在庫の数値根拠はあるのか?、4.債務を少なく計上していないか?、といった点)に注目しています。

 また、債権については、月商との比較、これまでの決算書等を見比べることで、債務については仕入金額との比較、在庫金額の推移をチェックすることで、異常値の判断を行ないます。
 これから見てもわかるように、適正な数値計上を心がけなければなりませんね。
 これに対して、会社の経営上、見つけておかなければならないポイントも、経営者としては把握しておかなければなりません。
 まずは、債権ですが、これは自社の売上高、並びに売上債権回収サイトと照らし合わせて考える必要があります。

   仮に、毎月の売上が2千万円で、回収サイトが30日とした場合、売上債権の残高としては、月商と等しい金額が残高として計上されます。仮にですが、この回収条件にも関わらず、3千万円や4千万円の債権残高がある場合は、
    (1)未入金・未回収の債権がないのか?
    (2)実質回収できない債権が含まれていないか?
    (3)売上を過去に誤計上していないか?
     (例えば、桁間違いで入力したりしていないか?)
    (4)粉飾計上していないか?
という点が考えられます。

 次に、棚卸資産についてですが、これについても常時棚卸金額の内訳把握(商品別・店舗別・部門別)に努めなければなりません。
また、仕入債務との金額比較も必要です。

 仮に、取引量が増えている場合は、仕入金額も増えているわけですから、それに伴い在庫量が増加するのは理解できますし、取引量が減っているのであれば、仕入金額の減少に伴い、在庫金額も減少していることになります。
ただし、これはあくまで一般論です。これに逆行する事例もないとは言いませんが。

 あなたの会社の債権(売掛金・受取手形)、債務(買掛金、支払手形)、在庫(商品、製品、原材料、仕掛品等)は適正金額になっていますか?

 毎月ご覧になられる試算表では、この債権・債務・在庫の推移を必ずチェックして下さい。財務力をアップさせていく上で、この管理は非常に重要です。
経理担当者と協力して管理を継続して下さい。