vol.72 忙しいから人を入れる??

 お客様と打ち合わせをさせて頂いていると、
「忙しくなったから人を入れたいと思っている」という話になります。
 特に、幹部の方にお話をお聞きすると、よくこの言葉が聞こえてきます。

 私も、前職では幹部職の時期がありましたので、その当時は忙しさを
解消するために、人を採用して欲しいと思うことがありました。

 ですが、よくよく考えてみると、「忙しいから人を入れる」となると、
忙しさを解消するのが目的であり、結果として増員を行って、現場の忙しさが
解消されたからと言って、必ずしも利益が上がるというものではありません。

 財務の視点に立つと、人を採用するという行為は、投資に対する回収計画が
明確に立てられているのが前提で、初めて実行に移されます。

 現場の忙しいという声だけで、増員を実行した場合、当然のことですが、
採用に関するコスト、採用してから一人前に育成するまでのコスト、
そして採用したその従業員の人件費、もちろんその人員を管理するための
コストなど、いろんな経費が発生します。

 また、「忙しい」と思っていることでも、実際に機械設備を刷新したり、
現在の業務のIT化を進めることで、問題が解決することも考えられます。

 それらの経費を投資した上で、それでも人員を増員させることで、明確な
費用対効果が期待できると判断できた段階で、初めて増員という話になる
と思うのです。

 これは、増員に限った話ではなく、設備投資やコストのかかる話等にも
関連するテーマだと思います。

 「新しい機械が欲しい」から買うのではなく、購入することでかかるコスト
に対して、どれだけの投資効果が見込めるのか、また、投資したものがどの
時点で回収できるのか、これらをシミュレーションした上で、実行に移すべき
だと思います。

 要するに、「欲しい」を基準にするのではなく「機能」がいくらのコストで
入手できるのか?ということです。

 みなさんの会社でも、何かの経費を使う時に、その目的を忘れて購入している
ケースはありませんか?

 今一度、財務の視点から物事を捉えた上で、かけるべき経費かどうかの判断を
行ってみましょう。

vol.71 キャッシュストック計算書

 今回は、キャッシュストック計算書についてです。

 聞き慣れない名前かもしれませんが、実はこの計算書が、
中小企業が資金繰りを改善する上で、無くてはならない
計算書なんです。

 というのも、このキャッシュストック計算書は、企業がどのような
経緯を経て手許資金を残しているのか、そしてその資金残高の内訳を、
資金調達と資金運用の観点から分析する計算書だからです。

 ・資金調達=どこからお金を調達してきたのか?
 ・資金運用=調達してきたお金をどのように使っているのか?

 単純に言えば、資金調達-資金運用=資金残高 となるわけですが、
これでは、何が原因で手許資金が増減しているのかわかりませんので、
その内容を確認するのに、全部で4段階の資金に区分します。

(1)損益資金...会社を始めてから今日に至るまでの売上等の収入を
  資金調達、売上原価や販売費及び一般管理費等の固定費を資金運用と
  みなし、損益資金としていくらの資金があるのかを確認します。
   この段階で損益資金がマイナスになっている会社は、そもそも商売と
  して利益が出せていないことになりますので、要注意です。

(2)運転資金...運転資金という言葉を聞いたことがある経営者の方も
  多いと思います。ここでは取引条件で、まだ支払っていない買掛金等の
  債務を資金調達、入金していない売掛金等の債権を資金運用と位置付けて
  その差額を確認します。
   一般的には、売掛金の回収が買掛金の支払いを上回るケースが多いため、
  多くの中小企業では、この項目がマイナスになる場合があります。

 ※(1)損益資金-(2)運転資金=営業資金 と言います。
 (1)損益資金がプラスでも、(2)運転資金の影響で営業資金がマイナスに
 なっている会社は、手許資金を潤沢にする為に、借入や増資を行い、
 資金を調達する必要があります。

(3)投資資金...ここでは、企業が投資を行うにあたって調達した
  長期の資金(長期借入金や資本金)を資金調達として、そして
  実際に設備投資や在庫として抱えた金額を資金運用とみなして評価します。
   一般的には資金調達が資金運用を上回りますので、多くの企業が
  投資資金はプラスになる場合が多いです。
  (キャッシュストック計算書では、運転資金を債権と債務のバランスだけで
  評価するため、在庫については投資とみなしてこの区分で評価します)

 ※営業資金-(3)投資資金=安定資金
  営業資金から投資資金を差し引いた資金を安定資金 と言います。
 この金額が企業の基本的な資金繰りの目安になる資金です。
 ここが手薄な金額だと、日頃の資金繰りが不安定であることを
 意味しますので注意してください。

(4)調整(流動)資金
  最後の調整資金は、短期借入金やその他の流動負債の項目など、
  短期の資金調達と、有価証券やその他の流動資産を資金運用という
  区分で評価します。

 ※安定資金-調整(流動)資金=現預金残高 
  安定資金までの項目でマイナスが大きいのにも関わらず、
 調整資金段階でのプラスが大きい企業は、短期の資金調達で
 資金繰りを回していることになり、資金繰り状況が危険と
 位置づけられますので注意してください。

 このように4つの資金「損益資金」「運転資金」「投資資金」
「調整(流動)資金」という4つのカテゴリーで資金内容を評価して、
どの段階でキャッシュがたまっているのかを把握するのが、
キャッシュストック計算書の役割です。

 例えば、短期借入金が大きく、毎月の資金繰りが切迫している
企業等では、借入内容を短期から長期にシフトすることで安定資金を
確保したり、売掛金の回収と買掛金の支払いのバランスを見直して
営業資金のマイナスを削減したりなど、企業の実態に見合った
財務戦略をとることが可能になります。

 皆さんの会社でもキャッシュフロー計算書で、資金の流れを
把握するだけでなく、キャッシュストック計算書を作成して、
自社の手許資金の状況把握に努めてみてはいかがでしょうか。