vol.63 借入の元金返済を猶予する目的

 昨今の経済不況の影響を受け、借入の返済について、元金据え置き
(元金の返済を猶予してもらい、利息だけ払う)を検討しておられる
中小企業経営者も多いことかと思われます。

 同時に、元金返済の据え置き等のリスケジュールを金融機関に申請した場合、
今後の追加融資が難しくなることを懸念しておられる経営者も
多いかと思われますが、資金繰りを考えると、背に腹は変えられないのも
事実です。

 確かに、借入の元金返済自体は、経営状況が厳しい時には、資金繰りを
圧迫する大きな要因であることは確かですが、実際に元金返済自体を猶予して
もらったところで、経営や資金繰りが大幅に改善するわけではありません。

 資金繰り表でいうところの営業収支、キャッシュフロー計算書で
いうところの営業キャッシュフローをいかに改善するかが経営を
再建していく上で、重要となってきます。

 そして、猶予してもらっている間に、損益状況や資金繰りを改善し、
猶予期間終了後には、健全に借入元金を返済できる経営状態にまで
持っていかなければなりません。

 では、そのために、何をどのように改善していくのか?

 当然のことですが、一つは「損益計画の見直し」、もう一つは
「資金繰り計画の見直し」です。

 損益計画の見直しでは固定費の見直しから行います。
人件費、営業費、事務所・工場・店舗維持費、償却費、金融費用、諸経費
といった内容にカテゴリーを区分し、ぞれぞれの項目で見直しを行います。

 その一方で、売上計画、限界利益計画についても商品別、得意先別、
地域別等、ただ単純に全社目標数値を決めるだけでなく、
直近の傾向やデータを踏まえ、根拠のある目標計画に細分化を行います。

 このように検討した売上計画、限界利益計画、固定費計画を持ち寄り、
最終的にどれだけの経常利益を生み出せるかを確認します。

 適正な経常利益を出せると判断できた場合は、あとは資金繰りの検証を行い、
元金返済猶予期間でどれだけのキャッシュが貯められるのか、
また元金返済再開後でも、資金繰りは順調に推移するのかを検証します。

 一方で、損益計画の段階で、適正な経常利益を出せないと判断できる場合は、
売上計画、限界利益計画、固定費予算の見直しを再度実施しなければ
なりませんし、損益計画では利益が出ていても、債権の回収サイトや
債務・経費の支払いサイトの関係で資金繰りが好転しない場合は、
得意先や取引先との支払・回収サイトの交渉を行う等の措置を取らなければ
なりません。

 いずれにせよ、元金返済を猶予することは、あくまで
延命措置でしかありません。
 その延命措置が取られている間に、経営改善策を具体的に検討した上で、
数字で結果を出していくことが求められます。

 取引金融機関に、元金返済の猶予を望む場合は、
これらのことを踏まえた上で、金融機関との交渉を行ってください。

vol.59 金融機関に言い訳させない方法

 お客様の財務体質を改善するにあたって、必要不可欠とも言えるのが、
既存の取引(借入)がある金融機関との交渉です。

 ですが、多くの金融機関が交渉段階で躓きます。
 なぜ躓くのか?その最も大きな理由が「情報開示の仕方」です。
 多くの金融機関が、こちらが希望する借入条件への変更を求めると、
「直近の試算表を頂いていないから」という理由で、
結論を先延ばしにしようとします。

 で、直近の試算表を出すと今度は、
「ここ1年間の毎月の売上と仕入の一覧表を下さい」
 と言われ、素直に調べて提出すると、今度は、
「直近の借入の銀行別の残高を教えて下さい」
 という始末。
(この段階で、追加資料をまとめて依頼するよう求めても結果は変わりません)
言われた通り、残高の内訳を教えたとしても、
「前期の決算書と比べて、固定資産が増えていますが、
これは何を買われましたか?」という質問。
(何を今さら!!と思ってしまいそうですが、それぐらい
 日頃から融資先の細かい部分にまで注目していないのが現状です)

 これらの質問の他にも、
「直近半年間の資金繰り表と、向こう半年間の資金繰り計画書を下さい」
「この貸付金が発生した理由は何でしたっけ?これに関する資料があれば下さい」
 といったように、追加資料のオンパレードです。

 金融機関のシステム上、財務資料をもとに検討するという主旨は
よくわかりますが、この資料を作るだけで、一か月~二カ月程度の時間が
かかってしまうこともよくあります。

 金融機関の言い訳としては、中小企業に協力すると言いながらも、
「資料が無いと、審査できない」という言い訳の為です。

 では、このような時に備えて、どのような対応をすればいいのか?

 もちろん、日頃から、取引金融機関に対して、財務情報を適度に
開示することです。

 とは言っても、(企業規模にもよりますが)毎月のように資料を提出したところで、
逆に、金融機関もチェックしません。

 お勧めなのが、四半期単位で財務情報をまとめて、情報を開示する方法です。

 ちなみに、財務関連の開示資料として添付して欲しいのは、

 ・予算と実績の対比(単月と累計)
 ・昨年度実績と今期実績の対比(単月と累計)
 ・商品別・部門別・地域別の売上高・売上総利益・貢献利益といった部門別情報
 ・資金繰り実績及び向こう3カ月間の資金繰り予測
 ・財務分析指標
 ・借入金一覧表
 ・直近の試算表

 といったあたりです。

 一見、大変そうに思えるかもしれませんが、これらはいづれも自社の社内で
財務管理を行うにあたって必要不可欠なものばかりです。
 (逆に、これらの資料を日頃から作っていないというのも、自社の財務改善を
図る上での課題と言えます)

とは言うものの、現在の業務以外に、これらの業務をこなすのは大変!
と感じておられる方には、M's FACTORYが提供している

財務コンサルティングドットコム
WEB財務ドットコム

にて、金融機関への四半期情報開示の支援サービスを行っておりますので、
そちらをご利用下さい。

 皆さんの会社では、日頃からどのように取引金融機関と接しておられますか?

 自社の資金繰りを改善し、安心して経営に臨む上でも、これらの財務資料の整備、
そして金融機関への情報開示を積極的に実践して下さい。

vol.34 借入返済のための借入?

 先日、金融機関の担当者の方に、借入の見直しを提案させて頂きました。

私「A社の来期予算から考えて、自己資金で円滑に借入返済を
  進めることを考えると、毎月の返済元金が少し多いと
  思いますので、借り換えも含めて、返済内容を見直して
  もらえませんか?
   A社の社長は、毎月の元金返済額を落としたいという意向
  ですのでその点も踏まえて、提案をお願いします。」

金融機関担当者「資金が不足してきそうであれば、追加融資しますよ」

私「そうなると、毎月の元金返済額が増えますよね?先ほども
  お伝えしたとおり、A社社長の意向は毎月の元金返済額を
  減らしたいと考えているんです。自己資金の範囲内で返済を
  していこうと考えているんですよ。」

金融機関担当者「だったら、なおさら追加融資しますよ。
          1年か2年返済とかでどうですか?」

私「そんな短期の返済であれば、なおさら意味がないですし、
  そもそも、A社社長は借入の見直しを望んでいるのであって、
  追加融資を望んでいるのではありませんよ。」

金融機関担当者「それは無理な話です。もちろん、おっしゃりたい考えは
          わかりますが、まず受け入れられませんね。」

私「借入返済のための借入をするというのであれば、余計に
  支払利息が増えるだけですし、結果としてそれは企業の収益性を
  下げることにもなってしまうんですよ。
   そもそも、金融機関にとって、A社はお客様なんですよ。
  お客様の意向をなぜ無視できるんですか?」

金融機関担当者「...」

 というようなやりとりが続きました。

 確かに、金融機関からすれば、資金が不足しそうなのであれば、追加融資をすれば 済む話なのかもしれませんが、それはあくまで結論の先送りでしかありません。

 このような借入の見直し提案に積極的に協力してくれる金融機関の担当者が多く いらっしゃいますが、残念ながら今回のケースのように非協力的な金融機関担当者が いるのも事実です。

 ですが、中小企業の財務を改善するには、金融機関の協力が必要不可欠です。
 借入は、借りたとしてもいずれ返さなければなりません。

 そして、やみくもに追加融資を続けることは、結果として企業にとっても金融機関に とっても不幸な結末が訪れることになってしまいます。

 みなさんの会社では、借入の見直しを定期的に行っていますか?

 資金不足に陥りそうだからと言って、単純に追加融資の話に乗らないでください。

 財務の健全化を図るために、本当に必要な借入かどうかを検討したうえで、企業に とって最良の判断を行っていきましょう。

vol.32 借入元金返済を減らしたいのに...

 M's FACTORYにお問い合わせを頂く方の中に、「銀行借入を見直す必要性のある中小企業」がいくつか出てきます。

 私自身は、基本的には「借入は返さなければならないもの」(当然ですが)として位置付けて いますので、中小企業が借入をきっちりと返済して、最終的には自己資金経営、若しくは、 会社で捻出できる利益の範囲内で借入元金返済を実施できるようにアドバイスさせて頂いています。

 ですが、大変残念ながら、これらの中小企業の意向を無視して、自分本位な融資提案をして おられる銀行担当者が数多くいらっしゃるのも現実です。

 先日も、既存の借入の見直しを検討しておられる中小企業のA社長とともに、メインバンクの B銀行担当者にお会いし、融資内容の見直しを行うように打診しました。

 私「現在の約定返済だと毎月の返済が重たいので、元金返済金額を
   減額させたいんです。
   つきましては、現在貴行から融資して頂いている借入の
   a(借入残高1,200万円、毎月30万円返済)、
   b(借入残高1,800万円、毎月55万円返済)を一括返済して、
   新たに運転資金を調達して、手許資金を潤沢にしつつ、現状の
   返済元金を減らせる提案をしてもらえませんか?」

 銀行担当者「わかりました。では、cというプランはどうでしょうか?」
 ということで、借入提案cの内容をお聞きすると、借入総額が6,000万円の5年(60か月) 返済というプランでした。

 毎月の元金返済額は100万円です。

 私「なぜ、この提案なのですか?」

 銀行担当者「手許資金を潤沢にしたいんですよね?毎月の元金返済も今と
       そんなに変わりませんよ。何か問題ありますか?」

 A社長「今、M'sさんの話聞いてた?借入の元金を減らす為って
     言ってくれてたでしょ?」

 銀行担当者「大丈夫ですよ社長。また返済に困ったら貸しますから」

 という銀行担当者からの返事。

 大変残念ながら、後日メインバンクを他行(C銀行)に変更する結果に至りました。

 C銀行の変更理由は、A社長の意向を踏まえて、元金返済を見直し、M's Factory から提出した財務分析資料をもとに、会社の営業利益やキャッシュフローで返済できる範囲の 融資を実行してくれたからです。

 その後、A社長の会社の資金繰りは無事に安定しました。

 みなさんの会社のメインバンクの担当者は、どのような姿勢で御社と接してくれていますか?

 できれば、C銀行の担当者のように、会社の財務状況を踏まえて、適切な融資を実行して くれる方に担当してもらいたいですよね。

 中小企業側としても、融資の話は銀行に任せきりにするのではなく、しっかりと自社の財務状況 を分析して、銀行にどのように協力して欲しいのか、財務方針を明確にするべきだと思います。

vol.26 金融機関への情報開示

 先日、お客様が金融機関と交渉される際に、当社が毎月提供させて頂いている 月次財務報告書をそっくりそのまま渡してきたとの連絡を頂きました。

「資料に対する反応がよかったよ」
「追加で出して欲しい資料もないみたい」
「銀行の担当者と話するのに、資料を準備する必要がなくて助かったよ。ありがとう」
「エムズファクトリーの名前も銀行の担当者に売っといたから」

とのメッセージも頂きました。ありがとうございます。

 当社が作成して、お客様に提供している月次財務報告書については、社内向けの 財務管理情報としてだけでなく、金融機関の担当者が提出して欲しいと思っている項目も踏まえて作成しています。

 ですので、金融機関担当者からすると、「欲しい情報が手に入った」ことになるので、 稟議を書いたり、上司に決裁をとったりするにしても、事が運びやすくなります。

 金融機関の立場=お金を貸す立場ですので、

 ・試算表・決算書を速やかに提出してくれる
 ・欲しい情報・資料も速やかに提出してくれる
 ・社内の数値管理が徹底している
 ・経営計画書で今後の事業展開と数値計画が明確にされている
 ・損益計画だけでなく、資金繰り計画についても検証している
 ・月次試算表の精度が高い(減価償却や賞与等の年払経費の月割)

といった内容を融資先である中小企業に求めています。

 ですが、多くの中小企業では、これらの金融機関のニーズに対応しきれていないのが 現状です。

 当社では、このような状況の中小企業に対して、財務コンサルティングサービスを提供 させて頂いていますが、経営者や経営幹部だけでなく、取引金融機関からもよく お問い合わせを頂きます(もちろん、経営者に了解を得た上で、回答させて頂いています)。

 数字がわかりやすくなると、融資担当者も自分勝手な融資提案ができなくなりますし、 本当にその企業に見合った融資の実行に向けて協力的な金融機関とのみ取引をして頂く ことになるのです。

vol.4 金融機関担当者の役割

中小企業が、事業を継続して安定させるには、金融機関との円滑な関係が必要不可欠です。

 当然、経営者にとっては、金融機関の担当者が窓口になるわけですから、担当者の力量や経営者との相性が非常に重要になります。
 ですが、ここ最近、非常に残念なことですが、金融機関担当者の動きについてのクレームを、私の耳に数社の経営者の方々からお聞きしました。
 金融機関の担当者の皆様には特に参考にして頂きたい意見なので、あえて掲載します。

(1)追加書類の催促を何度も行なう
 これは、私どもの仕事でも同様ですが、お客様に書類の準備を頼む場合は、どのような理由でどのような書類がいくら必要なのかを一度に明確にさせることが最低条件といえますが、これを一切守らないし、守っていないことに対して何ら悪びれる様子も無いという担当者が実際にいます(残念ですね)。
 どの仕事でもそうですが、何度も相手に催促するのは『自分の仕事の段取りの悪さ』から来るということを自覚しなければなりません。

(2)水掛け論を自ら仕掛ける
 水掛け論とは、「言った」「言わない」の世界の話です。これは、相手に責任をなすりつけているのと一緒です。
 お客様(中小企業の経営者)から依頼を受けているわけですから、『お金を貸してあげている』という妙なプライドを捨てるべきだと思います。

(3)お客様から依頼された納期を守る意識が薄い
 これもよくある話ですが、余裕を持って融資資料を渡して融資希望スケジュールを伝えたとしても、「保証協会が~」「本店の審査部が~」「追加資料が~」といった理由を並べ立ててなかなか融資案件が前に進まないというケースです。
 このようなことを平気で伝える金融機関担当者は、お客様からの希望日程がずれ込むということがお客様の資金繰りにどのような影響を及ぼすことかを考えなければなりません。

(4)お客様ではなく、上司を見て仕事をしている
 これもよくある話です。お客様が期待する動きと上司が期待する動きのギャップが出ていることがよくありますが、上司の目ばかりを気にして、お客様の立場を無視した行動をとってしまうということです。

(5)なぜ、今回の融資が必要なのかを理解できていない
 資金繰り資料や、資金を融資する意図を何度も説明しているにも関わらず、なぜ、その融資制度を必要としているのかが理解できていないというものです。

経験の浅い金融機関担当者によくある話ですが、本当に頼りなく見えてしまいます。

 まだまだ挙げればキリがありませんが、この辺にしておきます。
 今回挙げたような動きを、メインバンクにされてしまうと、中小企業とすれば、たまったものではありません。
 実際には、このようなリスクに備えて、サブバンクとの取引を蜜にしておくことも必要です。

 メインバンクの対応に不満や不備があれば、いつでもメインバンクを交替しても大丈夫な状態にしておく手はずは整えておかなければなりません。
 皆さんの会社では、金融機関との関係は良好ですか?自社でするべき情報開示を積極的に行なった上で、金融機関担当者の動きにも注目して、取引の内容を検討して下さい。