vol.61 短期借入金の位置づけ

 M's FACTORYが中小企業の財務改善のお手伝いをする中で、まずは、
現在の財務状況を確認するために、決算書の中身をチェックさせて頂きます。

 その中でも、借入金については、注意してチェックを行います。

 というのも、企業によって、「短期借入金」「1年以内返済長期借入金」
という名目で流動負債に表示されている借入金と、「長期借入金」「役員借入金」
といった科目名で固定負債に計上して、借入内容ごとに表示方法を区分している
ケースもあれば、役員借入金を「短期借入金」、金融機関からの借入金を
「長期借入金」に一本化しているケース、または全ての借入金を「長期借入金」と
しているケース等、合計残高はわかるものの、その内訳を決算書だけで
判断するのは難しいからです。

 当然、内訳書や借入金の返済明細書と見比べながら、確認を行います。
 そして、借入ごとに返済内容が確認できれば、その後は具体的な借入返済
スケジュールの見直しを進めることになります。

 一般的には、財務体質を改善する上では、極力借入の返済をゆっくり
(長期間で)返済できる方法を検討するのが常套手段です。
その最たる部分が短期借入金を長期借入金にシフトする方法ですので、
これによって毎月の元金返済額を少なくして、返済スケジュールを
自社の営業収支の範囲内で支払えるように変えていきます。

 ですが、これが全ての企業に当てはまる方法であるとは言えません。
 企業のビジネススタイルによっては、短期借入金を有効活用した方が良い場合も
あるわけです。

 代表的なのが、多くの在庫を抱える業種です。

 このようなタイプの企業では、抱えている在庫をどれぐらい抱えるか、
またその在庫を販売して、売掛金を回収するまでにどれだけのサイトが
必要なのか、によって状況は変わってきますが、在庫数が大幅に増減せず、
必要在庫としてある一定の在庫を抱えなければならないケースでは、
その在庫金額に見合う短期借入金を常時抱えておくことが資金繰りを
安定させる上で、重要になってきます。

 在庫を抱える金額分だけ、企業としては手許資金を減らしているわけですから、
それを短期借入金で資金補填するというのは、単純な発想に聞こえるかも
しれませんが、重要なことです。

 但し、短期借入金と一概にいっても、その資金調達方法はいくつか考えられます。
 通常は、1年以内で返済予定の借入金、手形貸付、当座貸越等で調達した
資金等が短期借入金として認識されています。

 できれば、毎月元金返済を伴わない借入が望ましいですので、1年単位での
手形貸付の資金調達を行い、それを毎年更新する方法を取ったり、
当座貸越を利用して、在庫金額相当分の貸越を継続して実施するという方法を
選択して頂いた方が、手許資金が安定すると思います。

 なお、当座貸越等を利用する際に、金融機関からは、定期預金を担保として
差し入れるように要求されるケースがありますので、注意して下さい。

 このように、短期借入金といっても、企業のビジネススタイルによって、
その評価は様々です。

 もちろん、上記のように在庫を抱える企業であったとしても、営業収支が順調に
プラスを出している場合は、これらの短期借入金を一括返済したり、約定返済
(毎月元金返済を行う借入)に切り替えたりして、借入自体を減らすことができれば、
毎月の支払利息も減りますので、
理想的であることは事実です。

 いずれにせよ、決算書や試算表の短期借入金・長期借入金の科目残高だけで
判断するのではなく、まずは、今の借入金の残高及び返済方法が、自社の
ビジネススタイルに合っているかどうか、チェックすることから、始めてみて下さい。

vol.16 貸借対照表の内訳確認

 当社が財務コンサルティング業務の中で、『貸借対照表の整備』という仕事があります。

 『貸借対照表の整備』と聞いてもよくわからない方もいらっしゃるかもしれませんので、 簡単に説明しますと、貸借対照表は、会社の財産(資産・負債等)金額を明確にして、その 会社の一時点での財政状態をチェックするものです。

 なので、試算表や決算書の貸借対照表を見て頂くと『平成○○年○月○日現在』と記されて います。

 もちろん、綺麗に整備されている会社もたくさんあるのですが、同時に貸借対照表の中の 勘定科目の残高が不明瞭なものがたくさんある会社も数多く見てきました。

 一般的に金融機関等の第三者が、会社の決算書を評価する場合、貸借対照表において、 健全な資産が計上されているか、的確に負債項目が計上されているかが確認されます。

 この段階で、資産の内訳内容に不明なものが多かったり、仮払金が多かったり、または 計上されるべき負債の金額が少なかったりすると、当然のことですが、金融機関からの 評価は下がってしまいます。

 ですので、我々が財務コンサルティング業務に着手させて頂く際も、まずは貸借対照表の 各勘定科目を精査(チェック)して、健全な資産だけを計上するように指導させて頂きます。

 そして、ここで活躍するのが、補助科目です。
補助科目は各勘定科目の内訳を確認するのに、非常に有効なツールです。

「決算の時だけ内訳書を作成したらいいんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかも しれませんが、試算表の提出を金融機関に求められることもありますし、いつでも内訳を 確認しておくことで、金融機関から質問された時に的確に回答できるようにすることも 大切です。
的確に回答することで、その会社の貸借対照表における信用は着実に上がります。

 逆に明確な回答をせず、質問内容に答えなかったり、経理担当者が「わからないから」 と言って、会計事務所や我々のような第三者に答えさせたりする会社がありますが、これは よくありません。自社の情報を自社で管理することが、信用の第一歩と言えます。

 みなさんの会社では、貸借対照表の管理をしておられますか?
経理担当者だけでなく、経営者自身も会計ソフトを適度に覗いて、自社の貸借対照表を チェックする癖をつけて下さい。

vol.10 債権・債務・在庫の異常値

 私は、仕事柄、毎日のようにいろんな会社の試算表・決算書に目を通す機会があります。
 その月の試算表・決算書を見ただけでも異常な部分は大体把握できますし、昨年度と同月の試算表と見比べたり、期首との比較、前月との比較をするだけでも、異常値は見やすくなります。
 異常値の中で、代表的な事例が債権・債務・在庫に関する項目です。
 これらの項目は、
    (1)金融機関が見抜く異常値
    (2)会社の経営上見つけておくべき異常値
という2つの見方で捉える事ができます。

 例えば、金融機関の立場に立った場合、債権・債務・在庫の数字が適正値であるかどうか(1.粉飾をしていないかどうか、2.債権の中に既に貸倒に該当するものはないか、3.在庫の数値根拠はあるのか?、4.債務を少なく計上していないか?、といった点)に注目しています。

 また、債権については、月商との比較、これまでの決算書等を見比べることで、債務については仕入金額との比較、在庫金額の推移をチェックすることで、異常値の判断を行ないます。
 これから見てもわかるように、適正な数値計上を心がけなければなりませんね。
 これに対して、会社の経営上、見つけておかなければならないポイントも、経営者としては把握しておかなければなりません。
 まずは、債権ですが、これは自社の売上高、並びに売上債権回収サイトと照らし合わせて考える必要があります。

   仮に、毎月の売上が2千万円で、回収サイトが30日とした場合、売上債権の残高としては、月商と等しい金額が残高として計上されます。仮にですが、この回収条件にも関わらず、3千万円や4千万円の債権残高がある場合は、
    (1)未入金・未回収の債権がないのか?
    (2)実質回収できない債権が含まれていないか?
    (3)売上を過去に誤計上していないか?
     (例えば、桁間違いで入力したりしていないか?)
    (4)粉飾計上していないか?
という点が考えられます。

 次に、棚卸資産についてですが、これについても常時棚卸金額の内訳把握(商品別・店舗別・部門別)に努めなければなりません。
また、仕入債務との金額比較も必要です。

 仮に、取引量が増えている場合は、仕入金額も増えているわけですから、それに伴い在庫量が増加するのは理解できますし、取引量が減っているのであれば、仕入金額の減少に伴い、在庫金額も減少していることになります。
ただし、これはあくまで一般論です。これに逆行する事例もないとは言いませんが。

 あなたの会社の債権(売掛金・受取手形)、債務(買掛金、支払手形)、在庫(商品、製品、原材料、仕掛品等)は適正金額になっていますか?

 毎月ご覧になられる試算表では、この債権・債務・在庫の推移を必ずチェックして下さい。財務力をアップさせていく上で、この管理は非常に重要です。
経理担当者と協力して管理を継続して下さい。

vol.7 純当座比率

 財務分析の項目の一つに流動比率という項目があります。
これは、貸借対照表の資産の中にある流動資産と負債の中にある流動負債とを比較して、資金繰りが上手に回転しているのかをチェックする為の指標です。

 ちなみに、貸借対照表の中にある「流動」と「固定」における区分の基準は、一年以内(ワンイヤールールとも言います)で、資産であればキャッシュに換金されるかどうか、負債であれば一年以内に支払われるものかどうかという見方をします。

 ですので、一年以内にキャッシュに換金される流動資産と一年以内に支払われる(キャッシュが出て行く)流動負債とのバランスは、流動資産>流動負債となることが望ましいといえます。

 一般的には、これらを流動比率(流動資産÷流動負債×100)でチェックします。業種にもよりますが、150%~200%あれば、資金繰りが順調にまわっていると言われています。

 ところが、その一方で流動比率が高いにも関わらず、資金繰りに苦慮している会社もたくさんあります。

 というのは、流動資産に隠されている勘定科目に問題があります。
流動資産では、(1)現預金、(2)売上債権、(3)有価証券、(4)棚卸資産、(5)その他流動資産に分類されています。

 中小企業では(3)の有価証券を多額に保有することは少ないので、ここでは(2)(4)(5)を中心に話を進めます。

 まず、(2)の売上債権ですが、これには予定サイト通り回収できている正常債権と、回収が遅れている延滞債権、そして回収が不可能な破産債権に分類する事ができます。
 この売上債権で、仮に延滞債権や破産債権が多額に含まれていたとすると、実際は流動資産に該当しない債権が含まれていることになります。

 次に(4)の棚卸資産ですが、不良在庫が多額に存在していたり、在庫の滞留期間が非常に長い場合は、流動資産に該当しない債権が含まれていることになります。

 そして(5)のその他流動資産ですが、これには、立替金、仮払金、未収入金短期貸付金といった科目が含まれています。
 これらの科目の中には、前期以前の決算書から引き続き残高が残ったままになっているケースがあります。

 このように、(2)(4)(5)の中にもワンイヤールールに適しない債権が含まれていることから、単純に流動比率をチェックして、150%を超える指標だからといって、安心する事はできません。

 これらの事態に対応すべく、当座比率という指標も存在しています。 これは、当座資産(現預金と売上債権、有価証券)と流動負債のバランスを見ることで、資金繰り状況をチェックする為のものです。
 当座比率(当座資産÷流動負債×100)では、棚卸資産やその他流動資産を除いて評価を行なう為、ある程度の信憑性は高まりますが、以下の問題が発生します。

 (1)売上債権の中に、延滞債権や破産債権が含まれている場合
 (2)有価証券が含み損を抱えている場合
 (3)固定負債の中に、ワンイヤールールに適合する支払が存在している場合
  (長期借入金の場合、一年以内に返済する借入元金返済部分が、流動負債の中に含まれていない場合)

 これらのケースが該当する場合、当座比率といっても、正確に自社の資金繰り状況を評価する事ができません。

 そこで、みなさんに実践して頂きたいのが、この純当座比率という考え方です。
 これは、私自身が独自に考えた分析指標ですので、一般的な財務分析指標には掲載されていません。
 この指標をチェックするにあたっては、さきほど記載した当座比率の問題点を考慮して検証します。

   (1)純当座資産...現預金、売上債権のうち正常債権、有価証券(時価)
  (2)純流動負債...流動負債、固定負債のうちワンイヤールールに適合する債務

 
純当座資産÷純流動負債×100=純当座比率


 この純当座比率を使った上で、指標が100%を超える状態であれば、資金繰りは順調であるといえますし、その一方で100%を切る状態であれば、財務面で問題が潜んでいるといえます。

 決算書(貸借対照表)をチェックする際は、是非この純当座比率を使って、財務状況を評価してみましょう。

vol.5 決算書を読みこなすには~勘定科目編~

 皆さんが日頃ご覧になる試算表・決算書は、全て「勘定科目」によって構成されています。

 決算書を読みこなせるようになる為には、まずは勘定科目の意味を理解できるようにならなければなりません。

 貸借対照表であれば、現金、預金や建物、車両運搬具、また損益計算書であれば、売上、給料、地代家賃といったような勘定科目を目にする事があると思います。
(製造原価報告書がある会社は、材料費や賃金、外注加工費等があると思います)

 ただし、これらの勘定科目のように、科目名を見るだけで、どのような内容なのかを理解できるものが全てとは限りません。
 当然、勘定科目の名前からして、意味が理解しづらいものや、勘定科目の金額の中身がわからないものも出てくると思います。

 これらの懸念材料に対応できるようになるには、貸借対照表・損益計算書のそれぞれの勘定科目で以下のような対応が必要です。

   貸借対照表の勘定科目については、各科目の合計金額の内訳を把握すること(例:普通預金であれば、どの銀行にいくら預けているかを確認する)が必要です。
その為には、経営者自身が、経理担当者から試算表をもらう時に、貸借対照表の内訳についても同様に報告してもらう事が重要です。

 そして、その上で勘定科目の名称が不明なものについては、経理担当者に確認して下さい。(理解しづらい勘定科目があれば、経理担当者か顧問税理士事務所の担当者に確認するよう心がけましょう)

 次に損益計算書です。ここでは、おおよそ使っている勘定科目について、理解できると思いますが、「どのような経費をどの勘定科目で処理するのか」という社内ルールを経営者と経理担当者の間で確認しておく必要があります。
(例:ガソリン代、従業員の通勤旅費代、税理士・社労士・コンサルティング会社への顧問料、といったような経費が発生した場合に、どの勘定科目で処理するのかを決めておきましょう。ガソリン代であれば、旅費交通費、燃料費、車両費といった勘定科目のいずれかに計上されるケースが多いです)
 同じ性質の経費がバラバラの勘定科目に計上されることの無い様に、勘定科目の計上ルールを決定しておきましょう。

 同じ性質の経費計上ルールを明確にすることで、(1)予算設定が可能、(2)過年度比較、先月度比較等の比較分析が可能になります。

 自社の試算表・決算書に記載されている勘定科目の意味と金額内訳を把握して、自社の経営に役立てて下さい。